八重洲ブックセンターの想いで -3Dに想うこと―
数年前からDXという言葉が聞かれるようになりました。都市部では、建物や地下空間など、ビル風の挙動など、様々な情報が三次元化されています。一方、私が19歳まで過ごした福岡県南部の筑紫平野は、遠浅の干潟の干拓地が広がりまっ平。さらに特殊土とされる超軟弱地盤「有明粘土」のおかげで高い建物が建てられず、3D映えのしない故郷です。ビル風はあり得ませんが、平野全体を流れる風の向きや強さが、私たちの日常や“道草のルート”にも大きな影響を与えます。そのため、風の解析ひとつ取っても、視野は一桁広くなります。これと言ってデータも整備されていない分、3Dモデルの作成は田舎の方が難しいかもしれません。
そんな私が3Dを“感じた”のは丁度30年前でした。
1994(平成6)年、就職活動で初めて上京しました。大学のある大阪からの新幹線代を十分に持ち合わせていなかったので、夜行バスで東京駅八重洲口に来たのが最初です。早朝6時頃に到着して午後3時に面接を終え、午後10時頃の帰りのバスまで時間が有り余っていました。その時間つぶしの寄り道のひとつが、八重洲ブックセンターでした。8階建てのビルすべてが書店というスケールに圧倒されました。しかし、スケールは大きいものの、いたって静か、、天井高くまで続く本棚、狭い空間に詰め込まれた知識の数々。その隙間を縫うようにして人々が行き交う、しゃべることもすることもないから、空間を実感してしまう。
私にとっては、高校の真横の書店が基本スケールでした。書店の入り口から一番奥にいる人の顔が分かる。「おうっ、シモガワ、、そこで参考書ば読むくらいなら、授業中居眠りばせんとよかとに、、」と声をかけられる、、そんなしょうもない会話が成り立つような「平面的な」スケール。
八重洲ブックセンターが再開発に伴い営業を終了するというお知らせがありました。超高層大規模複合ビル(2028年度建物竣工予定)への将来的な出店を計画しているようなので、書店がなくなるわけではなさそうです。しかし、「書店だけ」のビルとして、東京の大きさを感じさせてくれた書店として思い出に強く残っています。
八重洲ブックセンター(Wikipediaより)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E9%87%8D%E6%B4%B2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC