○私は沢水を飲んでいます
環境地質の仕事の一つに地表踏査があります。地表踏査では地図と調査道具を持って歩いて現地を歩きまわり(時には滝や崖ものぼります)道路沿いや沢沿いの露頭を観察して地質を調べたり、地表のクラックや構造物のクラックを観察して道路のメンテナンスや地すべりの調査をしています。最近では住宅地周辺の斜面のメンテナンスも行っています。今後は生態系調査も増えていくでしょう。
地表踏査では人里から離れた山間部を歩く事があります。私は登山道のない沢を標高2200mまで登った事があるくらいです。下山したときは夜になっていました。熊も一度見たことがあります。
山間部を歩くときは水筒の水では量が足りないので沢水を飲む事になります。湧水している確実にきれいな水が飲めるポイントがあれば水筒に水が合っても沢水を飲んでいます。
○どんな沢水を飲むか
まず沢に十分な水量(水深)又は流速がないとだめです。手で水をすくったときに泥を巻き上げてしまいます。透明度は舌ざわりだけでなく精神的にも重要な要素です。
次に水生昆虫などがいるか観察します。とくにヤゴなどは綺麗な水に生息しているので飲めるかどうかの判断材料になります。昆虫ではないですがオウサンショウォがいればまず飲める水と思っても良いでしょう。都会生活になれきっている人であれば虫を見ただけで気持ち悪いと思うかもしれませんが自然では虫がいないほうが気持ち悪いのです。野菜を買うときでも虫がついているから買わないのではなく虫がついているから農薬が薄く安全な場合もあるのです。
上流に林道がある場合は要注意です。林道沿いにゴミがどっさり捨ててある事が多いのです。地図をみて人家や農場はないか、林道はないか確認する必要があるでしょう。沢水を飲んで上流に歩いていったらゴミの山があったということは珍しくありません。とくに沢水を飲んでイップクして「あーうまかった」と言った後にその水が汚いと知ったときはオエッツとなるだけではなく、自分の舌が信じられなくなり、沢水恐怖症にもなりかねません。
水温も重要です。いくらミネラルが豊富で健康に良く綺麗な水でもぬるかったらおいしさは半減するでしょう。
最後に動物の糞が近くにないか確認します。北海道ではキツネの糞によるエコノコックスという菌(飲んだ場合数年間の潜伏期間をおいて発病し死にいたる場合もある)がいるのでさ一見飲めそうな沢水でもリスクが大きいです。このことを考えると動物の糞のそばにある水は注意する必要があります。
○沢水の将来
近年水質汚染がさわがれ将来的には水の商品価値があがると言われています。海外旅行に行くと分かるのですがビールよりもミネラルウォー
ターのほうが高い地域もあります。今後水質汚染が進み水はたくさんあるのに飲水は不足するという時代がくるでしょう。
水は循環しています。都心の汚染はいずれ海に流れ蒸発し雲となって山で雨が降り、かつては綺麗だった沢水も汚染されていくでしょう。おいしい水を確保するには山の自然を残すだけではだめなのです。都心の環境も良くしていかないとおいしい水の将来は暗いでしょう。
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