2011年の防災の日に考えたこと 下河 敏彦
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毎年9月1日は防災の日です。これは1923年関東大震災の発生した日であることはよく知られているところです。今年は”関東”という範囲を大きく上回る”東日本”大震災が発生しました。各地では、いつにも増してし真剣モードの防災訓練が行われたようですが、災害は”その時”のみならずその後何十年と影響がのこるので、中長期的な対策も必要です。この2011年の8月末に行われた地すべり学会の、東日本大震災のセッションで、京都大学防災研究所の釜井俊孝先生が、「緑の等高線都市」を提唱されておられましたが、そのご発表を聞いて気が付いたことがあります。
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○DESIGN WITH NATURE
私は新入社員のころ、自然環境アセスメントや都市計画・緑のマスタープラン等をメインの業務とする会社にいました。そのころ、上司からすすめられた本があります。イアン・L・マクハーグ(1969):下河辺 淳・川瀬篤美監訳(1994):『デザイン・ウィズ・ネーチャー』集文社,212p.でした(アマゾンにまだ在庫があるようです)。原著は1969年と、日本では高度経済成長期の真っただ中に執筆されていたと思われます。別の言い方をすれば、地震時に変状・宅地破壊・液状化等の発生しやすい谷埋め盛土がすごい勢いで造成されていた時期です。新旧の地形図を重ねあわせればわかるのですが、日本の国土は信じられないくらい平坦になりました。この本の書評には、WITHという前置詞に自然と人間の共生の意図があると書かれていましたが、日本の開発はONだったような印象です。
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○「最適土地利用」と「緑の等高線都市」
さて、『デザイン・ウィズ・ネーチャー』の97〜99ページマクハーグ氏が考える「最適土地利用」の考え方を示した図、挿絵が掲載されています。これをみると、水辺、森林、地下水、土壌などの自然環境を構成する要素が”地形なり”に分布しており、できるだけこれに逆らわずに土地を利用するべきという意図が読み取れます。地すべり学会で釜井先生が提唱された「緑の等高線都市」の図を見たとき、”あっ、似ている”と思いました。しかも、高齢化といった現代日本の課題まで解決への道筋が示されています。
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下河辺 淳・川瀬篤美監訳(1994):『デザイン・ウィズ・ネーチャー』に示された「最適土地利用」
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地すべり学会における釜井先生の発表スライドより。会場で撮影した写真をもとに編集
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東京では2011年3月11日、多くの方が帰宅困難になりました。しかし、主要道路の陥没や盛土の崖の崩壊がなかったので、道を歩くことができました。懸念される首都直下型地震では、そうはいかないと思います。奇しくも『デザイン・ウィズ・ネーチャー』の95ページに示された「無秩序な開発」の例と、首都圏の土地利用はそっくりなのです。
地すべり学会では、盛土造成地のどこが危ないかを予測することは、ほぼ確実に可能であることが発表され、具体的な対策工も検討されていました。医療器具や薬をそろえるまえに、健康診断が大切であるように、防災にたいしても、”まずどこか”という意識を高めた方がよいでしょう。
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