防災調査
ハザードマップに一歩踏み込む
斜面・地盤の影響を反映した擁壁点検
土砂災害防止法に基づく基礎調査が一巡し、これから土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の対策が必要になってきます。また、既存不適格と呼ばれる擁壁の老朽化に伴う安全対策も喫緊の課題です。
1948年
1961年
擁壁のはらみ出し、湧水を示唆する植生、湿り、フェンスの不具合や転石等のヒントをもとに、裏込めや盛土材料、それらの地中洗堀の有無(その要因を有する特殊な地形・地質)の状況を調査します。
その上で、実測した地形や土層厚情報から土層断面図を作成します。次に、土層強度検査棒で計測したc・φを使って安全率を計算します。
つまり、実測値に基づいて抵抗力と滑動力の比で斜面の安定性を評価する、つまり順算による安定解析ができるため、安価で予防防災が可能になります。
土層強度検査棒を使った地質断面と安定計算
- 【文献】
- 鵜澤貴文・池邊紘美・小坂英輝・大野博之・稲垣秀輝(2015):44. 崖災害の多い横浜市での傾斜地盛土の安定性の検討,応用地質学会研究発表会講演論文集 平成27年度 pp.87-88
- 下河敏彦・稲垣秀輝・小坂英輝・鵜沢貴文(2013):斜面表層の簡便な土層強度調査と対策工の提案-平成22年9月神奈川県北部豪雨災害の調査事例- 砂防学会誌 Vol65 No5 pp.41-44
横浜・川崎市内のがけ崩れのうち、最も規模が大きくなる地質構造
風化で軟らかくなった岩盤(上総層群)の上に、固まっていない砂礫が堆積している。
はらみだしていた擁壁が春の嵐(豪雨)崩壊した。崩壊前後の状況(横浜市内)
西日本豪雨災害の土石流の調査。大きな石の流れた土石流の範囲と砂にうずもれた洪水・土石流と被害の状況を調査し、石碑と災害伝承の意義についても講演しました。
深層崩壊・地すべり(大規模な土砂災害)
台風が大型化し強い雨が長く降る場合、大量の雨水が地下に浸透し、地盤が深くまで緩み大規模に崩れる深層崩壊や、山の斜面が一団となって動く地すべりが発生します。平成23年9月には、奈良県の十津川村では数多くの深層崩壊が発生し、人的被害や鉄塔の倒壊など社会インフラの破壊など大きな被害となりました。環境地質は、地形解析や地表・地質踏査や災害調査を通して、深層崩壊や地すべりの発生しやすい場所の特徴を研究し、山地の防災・減災に貢献しています。
平成23年9月紀伊半島豪雨による深層崩壊の調査
地震災害のリスク調査
盛土造成地の地盤災害リスク
平成7(1995)年の阪神・淡路大震災以降、大規模な地震時に、丘陵地に造成された宅地の地すべりが注目されるようになりました。特に谷を埋めた盛土造成地は船のように流動して地すべりを起こし、腹付け盛土は崖地に付け足した部分が急激に崩壊しやすいことがわかってきました。
当社では、東日本大震災をはじめ、地震時に被害を受けた盛土造成地や、各地の盛土造成地について、古地図を使った調査や現状でのクラックや湧水といった変状の現地調査、表面波探査など、盛土造成地の地震時のリスク評価も行っています。
東日本大震災で被災した盛土造成地(宮城県内)
液状化のリスク
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、千葉をはじめ横浜・川崎といった東京湾岸でも多くの液状化が発生しました。液状化発生定点は、かつての澪筋と埋立境界や、N値5以下の砂質堆積物の分布域に集中することを解明しました。これらの調査によって、液状化のリスクに関して地区・街区といった、より暮らしに密着したレベルの評価ができます。
臨海平野・埋立地の液状化調査(千葉県)
防災調査関連の文献リスト
著者・共著者 | 発行年 | タイトル | 掲載誌・発表学会等 |
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下河敏彦 | 2018 | 高精度地形情報の活用と防災 | 応用地質Vol5 No.5 pp.302-310 |
稲垣秀輝 | 2018 | 2017年九州北部豪雨災害調査団報告会の開催報告 | 応用地質Vol59 No.2 pp.302-310 |
大野博之・小坂英輝 鵜澤貴文・稲垣秀輝 |
2017 | 要注意な第四紀断層」としての評価:「新編日本の活断層66豊橋」を例にして? | 地盤工学ジャーナル Vol12 No.2 pp.161-175 |
土砂災害予測に関する 研究集会 |
2017 | 熊本地震とその周辺-プロシーディング | 防災科学技術研究所 研究資料 (411) pp.1-231 |
稲垣秀輝 | 2017 | 2016年熊本地震による斜面土砂災害の特徴および活断層との関係とその後の豪雨災害 | 応用地質 Vol 58 No.3 pp.188-196 |
菊本 統・下野勘智 伊藤 和也・大里重人 稲垣秀輝・日下部 治 |
2017 | 我が国の自然災害に対する統合的リスク指標 | 土木学会論文集F6 (安全問題) Vol 73 ,No.1 pp. 43-57 |
鵜澤隆文・池邉紘美 小坂英輝・大野博之 稲垣秀輝 |
2016 | ?44. 崖災害の多い横浜市での傾斜地盛土の安定性の検討 | 応用地質学会研究発表会 講演論文集 平成27年度 pp.87-88 |
下野勘智・菊本 統 伊藤和也・大里重人 稲垣秀輝・日下部治 |
2016 | 自然災害に対する全国47都道府県のリスク指標の試算と考察 | 土木学会論文集F6 (安全問題) Vol. 72 (2016) No. 1 pp.1-10 |
楮原京子・鈴木素行 松木宏彰・坂口和之 稲垣秀輝・小笠原 洋 松原輝明 |
2016 | 2014年広島土石流災害発生2渓流沖積錐を形成する土石流堆積物の編年 | 自然災害科学Vol.34 No.4 pp.295-308 |
稲垣秀輝・大野博之 磯部有作 |
2016 | 平成26年8月広島土砂災害の土石流粒度構成の違いによる沖積錐の形成過程 | 日本地すべり学会誌 Vol53.No.5,pp1-11 |
苅谷愛彦・清水勇介 | 2016 | 飛騨山脈・蝶ヶ岳西面,黒沢の谷壁における表層崩壊の発生年代と推定される誘因 | 専修自然科学紀要 Vol 47 pp.19~26 |
稲垣秀輝 | 2015 | 活断層からの距離とマスムーブメントの規模との関係 | 応用地質Vol56.No.1 pp.15-20 |
稲垣秀輝 | 2015 | 激甚化する気象現象に関わる火山地域での豪雨災害などの特徴と課題 | 応用地質Vol 55.No.6 pp.279-289? |
稲垣秀輝 | 2014 | 平成25年10月伊豆大島土砂災害の表層崩壊の発生機構と災害廃棄物 | 平成26年度応用地質学会 研究発表会講演論文集 pp.133-134 |
稲垣秀輝 | 2014 | ブラストの発生した高速地すべり | 日本地すべり学会誌 Vol54.No.2 pp.21-24 |
下河敏彦・稲垣秀輝 | 2013 | 2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生地点の地形・地質的特徴 | 応用地質 Vol54.No.2 pp.72-75? |
大野博之・大久保拓郎 稲垣秀輝 |
2013 | 地盤災害に係る廃棄物処理施設の事例 | 地盤工学会誌 Vol 6.No.7 pp.28-31 |
日下部治・伊藤和也 小梅川博之・稲垣秀輝 大里重人 |
2013 | 地盤リスクに関する保険制度と統一的評価手法の必要性 | 地盤工学会誌 Vol 6.No.7 pp.12-15 |
伊藤和也・稲垣秀輝 大日向尚己・大里重人 中山健二・岩崎公俊 岸田隆夫・日下部治 |
2013 | 地盤リスク低減のための社会システムの構築 | 地盤工学会誌 Vol61,No.7,pp. 4-7 |
稲垣秀輝 | 2013 | 平成23年台風12号による十津川大規模土砂災害の地質の特徴 | 研究発表会講演論文集 平成25年度 pp.1-2 |
下河敏彦・稲垣秀輝 | 2012 | 新しい変成岩・堆積岩分布域における深層崩壊の事例 | 平成24年度砂防学会研究 発表会概要集 pp..324-325 |
下河敏彦・稲垣秀輝 | 2011 | 2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生地点の地形・地質的特徴 | 平成23年度応用地質学会 研究発表会講演論文集 pp.47-48 |
鵜澤貴文・稲垣秀輝 | 2011 | 土層強度検査棒を活用した斜面の表層土砂流出防止工法の提案 | 平成23年度応用地質学会 研究発表会講演論文集 pp.57-58 |
瀬崎章太郎・鵜澤貴文 稲垣秀輝・小坂和夫 |
2011 | 山梨県北部風化花崗岩山地での斜面崩壊の特徴と植生回復を考慮した地域防災 | 平成23年度応用地質学会 研究発表会講演論文集 pp.90-91 |
稲垣秀輝 | 2010 | 地すべりへの環境地質学の貢献 | 第49回日本地すべり学会 研究発表会講演集pp.117-118 |
稲垣秀輝 | 2010 | 応用地質への環境地質学の貢献 | 平成21年度応用地質学会 研究発表会論文集 pp.85-86 |
下河敏彦・稲垣秀輝 | 2009 | 2004年新潟県中越地震に起因する地すべりと土砂移動 | 日本地すべり学会誌 Vol45 No.6 pp.23~28 |
大野博之・八村智明 齋藤 大・浅見和弘 |
2008 | アーカイブ衛星データを用いた建設事業の植生への影響のモニタリング | 環境情報科学 Vol37 No.3 pp.106-117 |
Hideki Inagak Hiroyuki Ohno, Shoji Ueno |
2008 | Learning Map on Landslide Disaster Induced by Chuetsu Earthquake on October 2004 in NiigataPrefecture of Japan | disaste and development p.32-36 |
大野博之・稲垣秀輝 大久保拓郎・宋 琳唱 |
2008 | 人工衛星DEM データと光学データを用いた地すべり地形の評価 | 日本地すべり学会誌 Vo45 No.2 pp.55~59 |
稲垣 秀輝・鈴木 浩二 柴田 拓・外山 康彦 |
2005 | 航空レーザー測量による斜面ハザードマップ | 日本地すべり学会誌 Vo42 No.4 pp.318-323 |
稲垣秀輝 ・大久保拓郎 長谷川修一 |
2005 | 古期地すべりの安定性 | 土と基礎Vo53 No.7 pp.17~19 |
稲垣 秀輝・平田夏実 | 2005 | 四国室戸半島の海食崖における崩壊特性 | 日本地すべり学会誌 Vo41 No.5 pp.492-495 |
稲垣秀輝・平田夏実 | 2003 | 北海道釧路地方の洪積台地周縁斜面の侵食速度と崩壊特性 | 日本地すべり学会誌 Vo39 No.4 pp.416-420 |
稲垣秀輝・大久保拓郎 長谷川修一 |
2002 | 古期地すべりの安定性について (その2) |
地盤工学研究発表会 発表講演集 Vol. JGS37 pp.2235-2236 |
稲垣秀輝 | 2000 | 滋賀県南西部に分布する風化花崗岩の表層崩壊の特徴 | 応用地質Vo40 No.2 pp.103-112 |
稲垣秀輝 | 1999 | 植生の違いによる風倒木の発生と斜面崩壊 | 応用地質Vo40 No.4 pp.196-206 |
稲垣秀輝 | 1999 | 1998年台風4号による福島県白河地方での表層崩壊の特徴 | 応用地質Vo40 No.5 pp.306-315 |