地盤裁判案件
地盤に係わる多くの相談の1-2割が訴訟に関するものである。全国の市民や弁護士、自治体、企業等からの依頼である。自然災害に係わるもの、地盤事故に係わるもので、原告・被告からの依頼に第三者的な専門技術者としての意見書を書く。最近では、裁判所からの鑑定依頼もある。地盤裁判の特徴は,原告はほとんど市民であり,被告は国や地方自治体が6割で最も多く,残りが企業(3割),個人1割,技術者1割になっている。訴訟の対象は,宅地が最も多くその数も増えてきている。特に,土砂災害の訴訟では土砂災害発生箇所が誰の所有地でその管理者は誰か、土砂災害発生の原因が予測可能であったか、発生の原因と機序(地質・地下水・崩壊メカニズムなど)、地盤工学的対応策の適正(調査・設計・施工・維持管理の仕方)の審理がされる。
民事訴訟では,判決以外に和解や取り下げによって終局(裁判が終了)する場合が多く,民事第一審訴訟では判決で終局したものは約半数で,残りは和解や取り下げによって終局しており,関係者以外にその内容はわからないので,地盤訴訟のノウハウは実務に係わった技術者以外にはなかなか継承されない。今後の課題であろう。
擁壁の変形が原因の地盤裁判事例での地盤調査中