環境地質FAQ

技術・実績

土砂災害危険区域とは
- 土砂災害による被害のおそれのある区域として、法律に基づいて指定された区域のことです。
- 土砂災害防止法に基づき、地形、地質、土地利用状況などの基礎調査を行い、土砂災害のリスクが高い区域を指定しています。
- 主な土砂災害危険区域には以下のようなものがあります:
- 土石流危険渓流
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 地すべり危険区域

土砂災害危険区域の指定目的
- 土砂災害の危険性を周知し、警戒避難体制の整備を促進することが主な目的です。
- 住民の生命と財産を守るため、危険区域の指定と情報提供を行っています。
- 指定された区域では、建築物の構造規制や警戒避難体制の整備などの対策が講じられます。

土砂災害危険区域の種類
- 警戒区域: 土砂災害の発生するおそれがある区域(イエローゾーン)
- 特別警戒区域: 土砂災害の発生するおそれが特に高い区域(レッドゾーン)

土砂災害危険区域の指定プロセス
1. 基礎調査: 地形、地質、土地利用状況などを調査
2. 区域指定: 土砂災害のリスクが高い区域を指定
3. 警戒避難体制の整備: 避難計画の作成、避難訓練の実施など

土砂災害対策の重要性
- 近年、気候変動の影響により土砂災害の発生が増加傾向にあります。
- 土砂災害危険区域の指定と適切な対策は、住民の生命と財産を守るために非常に重要です。

<引用>
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/dosha_saigai/map/kasenbu0091.html
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/dosha_saigai/map/kasenbu0087.html

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
- 土砂災害の発生により、住民の生命や身体に危害が生じるおそれのある区域です。
- 地形、地質、土地利用状況などの基礎調査に基づき指定されます。
- イエローゾーンでは、宅地建物取引の重要事項説明や要配慮者施設の避難計画作成が義務付けられます。
- ただし、土地の所有者等に対する私権の制限はありません。

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
- イエローゾーンのうち、建築物の損壊により住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれのある区域です。
- レッドゾーンでは、開発行為の許可制や建築物の構造規制などが義務付けられます。
- 宅地分譲や災害時要援護者関連施設の建築には、県知事の許可が必要になります。
- 居室を有する建物については、一定の構造基準を満たすことが求められます。

土砂災害区域の指定プロセス
1. 基礎調査: 地形、地質、土地利用状況などを調査
2. 区域指定: 土砂災害のリスクが高い区域をイエローゾーンとレッドゾーンに指定
3. 定期的な見直し: 指定後も定期的に区域の見直しが行われます

<引用>
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/dosha_saigai/map/kasenbu0087.html
https://www.mlit.go.jp/river/sabo/tokushu_dosha/tokushu_dosha1_sanko2.pdf

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の建築規制
- 土砂災害特別警戒区域では、建築物の新築や増築、改築などの開発行為には、県知事の許可が必要です。
- 居室を有する建築物については、一定の構造基準を満たすことが義務付けられています。具体的には:
- 基礎と一体の控え壁を有する鉄筋コンクリート造の壁
- 土砂災害に対する十分な耐力を有する基礎
- 土砂災害に対する十分な耐力を有する外壁
- これらの構造基準は、建築基準法に基づく政令で定められています。

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の建築規制
- イエローゾーンでは、建築物の新築や増築、改築などの開発行為に対する規制はありません。
- ただし、宅地建物取引時には、土砂災害の危険性について重要事項として説明する必要があります。
- また、災害時要援護者関連施設の新設には、県知事の許可が必要となります。

<引用>
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000144.html
https://www.sabo.pref.hiroshima.lg.jp/portal/kaisetsu/keikaihelp/05_07.htm

砂防堰堤とは
- 砂防堰堤とは、河川に設置されるダムの一種で、土石流による土砂災害の被害を防ぐことを目的としたものです。
- 砂防堰堤は、上流から流入してくる土砂を貯留したり、既に河床に堆積した土砂の流出を防止したりする役割を果たします。

砂防堰堤の働き
- 川底が削られるのを防ぎ、水の流れを遅くする。
- 渓岸のくずれを防止し、水の流れを遅くする。
- 一度に大量の土砂が流出するのを防ぐ。

砂防堰堤の設置目的
- 上流から流入してくる土砂を貯留するため
- 既に河床に堆積した土砂の流出を防止するため
- 土石流による土砂災害の被害を防ぐため

<引用>
https://www.hrr.mlit.go.jp/kurobe/jigyo/sabo/yoku/yoku_hat.html

不透過型砂防堰堤が土砂の流れを調節する働き

透過型砂防堰堤が土石流をとらえる働き

地盤の液状化現象とは、地震などの振動によって、普段は固体のように振る舞っている砂地盤が、液体のように振る舞ってしまう現象です。

1. メカニズム
砂地盤は、砂粒子が互いにくっつき合って構成されています。しかし、砂粒子の間には隙間があり、地下水で満たされています。
地震の揺れが伝わると、砂粒子はバラバラになろうとします。この時、地盤内部の間隙水圧が上昇し、砂粒子同士の間の隙間に入り込みます。結果として、砂粒子は水に浮いたような状態になり、地盤は支える力を失って液体のように振る舞うのです。

2. 発生しやすい条件
液状化現象は、以下の条件が重なると発生しやすくなります。
* 地盤条件:
* ゆるく堆積した砂地盤であること。特にN値(標準貫入試験の値)が20以下である。
* 地下水位が浅いこと
* 砂粒子が比較的均一な大きさであること
* 地震条件:
* ある程度の規模(マグニチュード5以上)の地震であること
* 振動が長く続くこと

3. 液状化現象による被害
液状化現象が発生すると、以下のような被害が発生する可能性があります。
* 建物被害:
* 沈下・傾斜: 地盤が液状化することで、その上に建っている建物が沈下したり、傾いたりします。
* 浮き上がり: 地中に埋まっている軽い構造物(マンホールや地下タンクなど)が、浮力で浮き上がってしまうことがあります。
* 地盤被害:
* 側方流動: 液状化した地盤が、傾斜に沿って水平方向に移動すること。橋脚の傾斜や護岸の破壊などを引き起こす可能性があります。
* 噴砂: 液状化した砂が、地表に噴出すること。道路や田畑に砂が堆積し、被害をもたらします。

4. 液状化現象への対策
液状化現象による被害を防ぐためには、以下のような対策が考えられます。
* 土地利用の制限: 液状化しやすい場所では、建物を建てないようにするなどの対策が有効です。
* 地盤改良: 地盤を締め固めたり、薬液を注入して地盤を強化するなどの方法があります。
* 建物側の対策: 建物の基礎を深くしたり、杭基礎にすることで、液状化の影響を受けにくくすることができます。
* 地震対策: 家具の固定や耐震補強など、地震による被害を軽減するための対策も重要です。

液状化現象は、地震発生時に甚大な被害をもたらす可能性があります。日頃からハザードマップなどで、自分が住んでいる地域のリスクを把握し、適切な対策を講じておくことが重要です。

地震対策のための建築基準について解説します。

地震大国である日本では、建物の安全確保のために建築基準法をはじめ、様々な法律や基準に基づいた耐震設計が行われています。ここでは、それらの基準について詳しく解説するとともに、関連する法令や用語についても触れていきます。

1. 建築基準法と耐震基準

建築基準法は、建築物の安全性、快適性、そして景観などを確保するために定められた法律です。地震対策については、主に以下の3つのポイントで規制がされています。

耐震基準: 地震力に対して建物が倒壊せず、人命を守るための基準です。建物の用途、構造、高さ、場所によって要求レベルが異なります。
・免震基準: 建物の基礎部分に免震装置を設置することで、地震の揺れを吸収し、建物へのダメージを軽減するための基準です。
・制震基準: 建物に制震装置を設置することで、地震のエネルギーを吸収し、揺れを抑えるための基準です。

2. 耐震設計の3つの段階

建物の耐震性を確保するために、建築基準法では3つの段階の耐震設計方法が定められています。

レベル1(建築基準法の耐震基準): 中規模地震(震度5強程度)に対して、損傷は許容するものの倒壊や崩壊を防ぎ、人命を守ることを目的とした最低限の基準です。
レベル2(建築基準法の耐震基準の1.25倍の地震力): 大規模地震(震度6強~7程度)に対して、建物の損傷を抑え、修復可能な範囲にとどめることを目的とした基準です。
レベル3(限界耐力計算): まれに起こる極めて大きな地震力に対して、建物が倒壊しないことを確認するための基準です。主に超高層建築物や重要度の高い建築物に適用されます。

3. 建築基準法以外の耐震基準

建築基準法以外にも、地震対策に関する基準はいくつか存在します。

学校施設耐震設計指針: 学校施設は避難場所としての役割も担うため、より高い耐震性が求められます。
病院施設耐震設計指針: 病院施設は災害時でも機能を維持することが求められるため、高い耐震性と機能維持が求められます。
消防署舎の耐震設計指針: 消防署舎は災害時に活動拠点となるため、高い耐震性と機能維持が求められます。

4. 耐震基準の変遷

日本の耐震基準は、過去の大地震の教訓を踏まえ、何度か改正されています。特に、1995年の阪神・淡路大震災を機に大幅な強化が行われました。

1981年: 新耐震基準の導入 (震度6強~7程度の地震に耐えられる強度を確保)
2000年: 住宅の耐震性に関する部分を中心に改正 (壁量計算の義務付けなど)

5. 耐震診断と耐震改修

既存の建物についても、耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うことが重要です。

耐震診断: 専門家が建物を調査し、現在の耐震性を評価することです。
耐震改修: 耐震診断の結果に基づき、建物の耐震性を向上させる工事を行うことです。

6. まとめ

地震大国である日本では、建物の耐震性を確保するために、建築基準法をはじめ様々な法律や基準が定められています。
新築の建物はこれらの基準を満たすように設計・施工されていますが、既存の建物については耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うことが重要です。

・人々の暮らし、歴史、文化だけなく、動物・植物はもちろん岩石や地盤など無生物にも、それそれの時間軸があり広がりがあり、位置関係による変化が起こります。
・環境地質学とは、こういった諸現象が人間社会へどのような影響を与えるか、様々な科学と連携し現場主義に立ち計画・研究・分析・解析・計画・評価を行うことを目的としています。
・防災調査、インフラの維持管理、宅地や裏山の安全安心の相談、環境・生態系調査の4テーマを軸として、幅広い業務を行っています。

・災害発生後には、現場での地質調査やデータ収集、分析を迅速に行い、被害状況の把握と原因究明をサポートします。また、災害前の予防的な地質リスク評価や復興計画に関する提案も行っています。
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・得意分野を伸ばし環境地質学の基礎知識と社員の親睦を深めるため、巡検や部単位での研究活動も行っています。

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・広報誌等の媒体のほか、自治体や河川事務所など、様々な機関で発行されています。

・地元の自治体や防災機関が提供している公式ウェブサイトから、特定の住所を入力することで、その地域のリスク情報を確認します。
・ハザードマップを参考に、自宅から避難所までの避難ルートを確認し、緊急時にどこに避難するかを計画します。このとき、ゲリラ豪雨の際によく浸水するなど、微妙な起伏にも注意しておくとよいでしょう。

・地形は、地質や土地利用、生態系、様々な環境要素が変遷してきた結果です。
・現在の地形を過去を読み解くカギとして、鳥の目(俯瞰)、もぐらの目(詳細)で災害要因や社会基盤整備の方針の基礎情報を分析・評価、対策の方針を立てます。
・例えば、道路沿いの防災対策の必要性、事業用地の適地選定・リスク評価だけでなく、生態系の基盤など環境科学に貢献します。

・国土地理院から配付されている5mメッシュデータが広い範囲で整備さてれ、活断層のリニアメントや地すべりの分化等、これまでの資料には記載されていないスケールの判読が可能になりました。
・さらに詳細な航空レーザー計測図も一般公開が進んでいます。このようなデータを使えば、斜面・渓流ごとの不安定土砂の分布まで分かります。災害復旧にも貢献します。

・都市化が進む前に湿田や谷地形であった箇所は、いまでも微妙なくぼみとして残っている箇所があります。
・古地図や空中写真判読のほか、3次元データも併用して低い土地を抽出します。

・昔の川や湿地の跡地のほか、砂丘間や周りを閉塞され軟弱な地盤の堆積した低地は、地震動が増幅しやすい土地です。一方、段丘面や扇状地などは、締まった土地であり安定しています。
・これらは、地形の成り立ちを考慮し空中写真判読や詳細地形図の解析を行うことで、予測することができます。

・地域の地形・地質や気象などの自然条件と、造成時期や時代に応じた法的規制などによっても違っています。
・1981(昭和56)年の建築基準法改正以前に造成された擁壁では、少ない雨量でも崩れやすい傾向にあります。
・ロームや砂礫層、泥岩の風化状況、地質構造に応じて地下水の湧出しやすい場所等も5種類のタイプがあり、それぞれ崖崩れの規模が違うため、斜面での不整合面の位置や地下水位の調査が重要になってきます。

・土質調査:原位置における土層の種類や強度、せん断強度を計測します
・地下水調査:地下水位の深さや季節的な変動、地下水の流れを把握します。地下水が切土に浸透すると、土壌の安定性が低下します。
・地盤構造の確認:層状岩盤の傾斜方向や断層の有無等から、地下水が供給され滑りやすい構造かどうかを確認します。

・地盤調査は、擁壁の設計において最も重要なステップの一つです。
・地盤の種類や強度、擁壁やその周辺からの地下水の供給、圧縮性やせん断強度などを解析することで、安定性を定量的に評価します。
・土層強度検査棒、地中音探査法など、原位置(その場)での地盤の強さを計測することで、経済的な対策工もご提案しています。

・地下水や雨水が擁壁の背面に溜まると、土壌の水圧が増加し、擁壁に対する負荷が大きくなります。
・排水設備はこの水圧を軽減し、擁壁の安定性を維持するために不可欠です。適切な排水対策が施されていない場合、擁壁の傾斜や崩壊の原因となります。

・擁壁は時間とともに地盤や環境条件の変化によって劣化する可能性があります。
・地盤の変動や排水設備の詰まり、擁壁の表面に生じたひび割れなどは、早期に発見して対処することで、大規模な修繕や倒壊を防ぐことができます。

・擁壁表面に水がしみ出している場合、排水設備が機能していない可能性があります。
・地盤中の地下水位が上昇している場合や、多量の雨水が供給されると、擁壁の裏側に水圧がかかり、擁壁の強度が低下します。
・排水設備詰まりだけでなく、周辺の排水系統や水を集めやすい地形の有無を確認し、必要であれば排水設備の改修を行います。

・水の浸透:ひび割れから水が浸透し、コンクリート内部の鉄筋が錆びることや、凍結によってひび割れがさらに広がる可能性があります。
・構造的弱化:ひび割れが擁壁の構造全体に広がると擁壁の耐久性が低下し、崩壊のリスクが高まります。
・地盤の影響:ひび割れが地盤の不安定さを示している場合、擁壁全体の沈下や傾きが生じる可能性があります。

・古地図と空中写真の判読:土地利用に伴う水みちの変化や、広い範囲で影響を及ぼする断層や地すべり地形を判読します。
・現地調査:土質強度の調査とともに、古地図や空中写真で得られた情報と現地状況を比較します。
・水文調査:地下水や雨水の流れを確認し、地盤の浸透性や排水状況を調査します。
・傾斜計や地中変位計によるモニタリング:盛土の動きをリアルタイムで監視、滑動の兆候を早期に捉えるために利用します。

・排水対策:盛土内部や基礎地盤に排水システムを設け、水の浸透を防ぎます。排水溝や暗渠(あんきょ)などを利用して、地下水位を下げることが重要です。
・斜面の緑化や植生の回復:斜面に植生を導入し、土壌の安定性を保ちます。植物の根が土壌を固定し、侵食を防ぐ効果があります。
・簡便な排水工:当社で開発している鉄根打設工など、簡便な対策でも排水できます
・段階的な盛土施工:盛土を一度に大量に積み上げるのではなく、段階的に施工することで、過剰な土圧を避け滑動リスクを軽減します。
・定期点検とモニタリング:盛土の状態を定期的に点検し、湧水やひび割れの増加等が認められた場合は早期に対策を講じます。モニタリング装置を設置して、滑動が発生する前兆を検出することも有効です。

・水の浄化: 植生や湿地が雨水中の汚染物質を取り除き、清浄な水を提供します。
・温度調整: 樹木や緑地が都市の温度を調整し、ヒートアイランド現象を軽減します。
・空気の浄化: 植物が二酸化炭素を吸収し、酸素を供給することで空気の質を改善します。
・土壌の安定化: 植物の根が土壌を安定させ、侵食や崩壊を防ぎます。

・地域固有の植物: 地域の自然環境に適応した植物を選ぶことで、地域の生態系と調和します。
・生物多様性の促進: 多様な植物種を選ぶことで、生物多様性を促進し、生態系を健全な状態に保ちます。
・生育条件の適合: 土壌の種類や気候条件に適した植物を選ぶことで、長期的に安定した植生を維持します。
・長期的な視点:上記の条件に配慮した上で、グリーンインフラ(緑化)の完成には数10年以上先を見据えた設計が重要です。

・空中写真や古地図の判読から従来湿地や水辺であった範囲を抽出し、浸水実績と合わせて洪水リスクを軽減します。里山では地すべりの安定性を評価します。
・斜面地には湧水の位置や風化状況をもとに、土壌の流出しやすさを考慮した緑化を計画し、都市の中心部には低木や高木を配置し、温度調整や美観を向上させます。
・エコパークの設計: 地形に応じて公園内に自然の池や小川を設置し、地域の生物多様性を保ちながら住民に緑の空間を提供します。

・地表面の被覆: 植物とその落葉落枝が地表面を覆い雨水の直接的な衝撃を軽減することで、表土層の侵食を防ぎます。
・根系による安定化: 水平および鉛直方向に張り巡らされた植物根系が鉄筋コンクリートの鉄筋のような役割を果たし、土壌と一体化することで、重力に抗い、風や水による侵食を防ぎます。

・自然地形の場合、その立地の極相植生(日本の場合、多くは森林)が防災および生態系の両面から最も優れていると思われます。
・切土、盛土など人工地形の場合、まず表土を面的に覆うシバ等の植物による緑化が必要です。一方、植栽樹木による緑化は根系が十分に発達しないことが多く、自然林と同じ防災効果は期待できません。
・防災上も種子や切株の萌芽からの自然植生の回復が重要となります。
・自然植生の回復までの間を補完する対策工法の一つとして「鉄根打設工法」があります。

・例えば地形地質技術者は、広域的な地形・地質構造から表流水や地下水が集中し、侵食が起こりやすい箇所が予測できます。
・生物系技術者は、植生から表層土の安定性や攪乱の頻度をある程度予測できます。
・両者の調査・解析結果をうまく組み合わせることで、その土地の防災上のリスクがより分かりやすく、精度も高くなります。

地震は、地球の表面を覆うプレートと呼ばれる巨大な岩盤が、互いに移動することによって発生する現象です。地下深くでプレートに力が加わるとひずみが蓄積され、限界を超えたときに岩盤が破壊され、その衝撃が地震波となって地表に伝わります。
地球の内部は、大きく分けて「地殻」、「マントル」、「核」の3つの層から成り立っています。私たちが生活する地殻は、いくつかの巨大な岩盤に分かれており、これを「プレート」と呼びます。プレートは、マントルの上部にある「アセノスフェア」という部分の上を、年間数cmというゆっくりとした速度で移動しています。このプレートの動きと、それに伴う地震や火山活動などを総称して「プレートテクトニクス」と言います。
プレートは、互いに押し合ったり、引き離されたり、すれ違ったりと、様々な動きをしています。そのため、プレートの境界では、巨大な力が常に働いており、地震が発生しやすい場所となっています。主なプレート境界のタイプと地震発生メカニズムは以下の通りです。

1.収束境界:
2つのプレートが衝突し、一方がもう一方の下に沈み込む境界です。沈み込むプレートによって大陸プレートが押し上げられ、やがて限界を超えると巨大地震が発生します。日本付近で発生する海溝型地震はこのタイプです。

2.発散境界:
2つのプレートが互いに反対方向に移動し、新しいプレートが生成される境界です。地下からマグマが上昇し、海底火山や火山島を形成します。地震は比較的小規模なものが多いです。

3.トランスフォーム断層:
2つのプレートが水平方向にすれ違う境界です。断層に沿って岩盤が破壊され、地震が発生します。アメリカのサンアンドレアス断層がこのタイプです。

プレート境界だけでなく、プレート内部にも「断層」と呼ばれる亀裂が存在します。断層は、過去の地震によって形成されたり、プレートの動きによって新たに生じたりします。断層に蓄積されたひずみが解放される際に、地震が発生します。
地震は、地球の表面を覆うプレートの動きによって発生する自然現象です。プレート境界や断層に蓄積されたひずみが解放される際に、地震波が発生し、地表に揺れをもたらします。地震の規模や被害は、マグニチュード、震源からの距離、地盤の性質などによって異なります。

大雨や融雪などを原因として、河川の流量が異常に増加することによって堤防から水があふれたり破堤することで洪水は発生します。

<引用>
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/jishin/about_eq.html
https://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/wakaru_shiryo2/wakaru_shiryo2_4.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p4.html
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kasen.html

一般に、自然災害のリスク評価は、その自然現象の「発生確率」とその「被害規模」の組み合わせで表現されます。
地震のリスク評価としては、日本全体にたいしては、たとえば、防災科学技術研究所では、、国の地震調査研究推進本部により作成された「全国地震動予測地図」等の地震ハザード情報を活用し、「全国概観版地震リスク評価」という、将来日本で発生する恐れのある地震による建物被害、人的被害の予測をおこなっています。
また、特定の建物の地震に対するリスク評価としては、PML評価という方法があります。これは、地震による予想最大損害額(Probable Maximum Loss)を評価するもので、一般に「建物の試用期間中で予想される最大規模の地震(50年間で10%を超える確率)に対して予想される最大の物的損失額(90%非超過確率)の、再調達費に対する割合」を地震PMLとしています。
洪水のリスクの評価方法としては、想定最大規模降雨を対象とした洪水浸水想定区域図の作成・公表、また、発生頻度が高い降雨規模の場合に想定される浸水想定図の作成・公表などがあります。

<引用>
https://www.j-shis.bosai.go.jp/srm
https://www.j-shis.bosai.go.jp/j-map/result/tn_258/html/html/4-7-1.html

地震リスク評価業務


https://www.tokio-dr.jp/service/due_dili/eq_pml/
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai02kai/dai02kai_siryou4-2.pdf

地すべりとは、斜面の一部あるいは全体が滑りやすい地層などを滑り面にして、ゆっくりとすべり落ちる現象です。比較的なだらかな斜面で起きやすく、非常に広い範囲で大きな被害が出ます。地すべりが動く速さは、普通は1日に数ミリ程度と目に見えないほどですが、一気に数メートルも動くこともあります。また、1つの場所で何十年にもわたって少しずつ続く地すべりもあれば、地震などがきっかけで、突然起きる地すべりもあります。一旦起きると斜面の上にある家や木が倒れたり、田畑や道路、鉄道などに大きな被害が出てしまいます。

地すべりの発生要因については大きく、素因と誘因があります。素因とは地すべりが発生する場所の地形や地質、地質構造、水文地質条件など現象が発生しやすい土地の状態を指します。素因としては斜面の傾斜、遷急線との関係、移動土塊の地質、地層の走向・傾斜、断層・破砕帯、変質、貫入岩との関係、地下水の集まりやすさなどが挙げられます。
一方誘因とは地すべりが発生するトリガーとなるもので、自然的誘因と人為的誘因に分かれます。
自然的誘因は雨や連続降雨、雪解け、による地下水圧の上昇が挙げられます。ほかにも地すべり末端の土砂が小規模崩壊や河川による洗掘などによって喪失することによるもの、積雪荷重や地震によるものなどもあります。
人為的誘因としては斜面の切土や盛土、トンネル掘削などの土工によるもの、ダム湛水によるものなどが挙げられます。

<引用>
https://www.hrr.mlit.go.jp/jintsu/kids/sabo/sabo04.html

地すべり

地すべりとは?


https://www.jasdim.or.jp/gijutsu/jisuberi_gaiyo/shikumi.html

地すべり地形の特徴として、地すべり頭部の半円状の急斜面や崖、その直下の陥没地や平坦地が挙げられます。この特徴的な地形はそれぞれ崖地形は「滑落崖」、平坦地などは「移動体」と呼ばれています。このほか、移動体の末端付近では凸状の押し出し地形なども形成されることが多く、地すべり地形の特徴の一つとして挙げられます。
これら地すべり地形の特徴は、地形図上では周辺部より緩斜面であったり、等高線が乱れるなどの特徴で認識することができます。
また、地すべり地を利用して集落や棚田、千枚田などが作られることもあるため、土地利用の観点からも地すべり地形の特徴をとらえることができます。

<引用>
http://www.chugoku-geo.or.jp/geology/environment/008
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/life/395078_886969_misc.pdf
https://www.pwri.go.jp/team/niigata/study/tech_info/leaflets/l1_landslides.pdf
https://www.jasdim.or.jp/gijutsu/jisuberi_joho/tyosa/tikeihandoku/tikeihandoku.html

把握困難な深層崩壊斜面の内部構造を推定するため、構造地質学で広く用いられているバランス断面法の考え方を取り入れたFEM解析です。
これまで大変形が再現できなかったFEMにおいて大変形を可能にしたため、対象斜面にどれだけすべり面が発生しているか、その時の斜面の力学的状況がどうなっているのか、斜面のどの部分にどのような変形が生じるのかを解析することが可能です。

深層崩壊は、斜面災害で多く発生する表層崩壊と違い、すべり面が地表より深い、風化岩で発生します。そのため、通常はボーリング調査や音波探査などの調査手法が用いられますが、どれも時間や予算がかかります。また、その結果を判断する高度な技術が必要になります。すべり面が判明しても、斜面全体がどういう構造になっているか分からない場合もあります。

BaFEM(Balanced cross section concept-based Finite Element Method)では、接触要素という要素を使用して解析を行います。この要素を対となる要素間に設定すると、解析1ステップ毎に要素間の距離を測定し、任意の値より離れれば「剥離」、近づけば「接触」と判定して自動で接触要素が生成、削除されます。これにより接触要素を介して対となる要素が接触している間は、接触要素の内部応力を介して要素間で力の伝達が行われます。対となる要素が離れて、新しい要素と「接触」しても、直前の内部応力が新しい要素に引き継がれます。これにより、要素間が離れても力学的な解析が可能になりました。

バランス断面法は1980年代から使われている断層位置を把握するための構造地質学的な手法です。バランス断面法では、断層による変形前後で地層の面積は変化しない(バランスが取れている)という前提で作図を行います。その上で、現在の変形後の地形断面を,断層運動による変形前の断面に戻し,断層や褶曲等の断面形状を推定するのが,バランス断面法の基本的な考え方です。断層に変位した地形の面積が出れば、変形前からどれだけ水平移動したかの距離が分かり、距離が分かれば断層の深さが分かります。これにより地表の地形から地下深部の構造が推定することが可能になります。小坂(2015)ではこのバランス断面法を、断層をすべり面、地層を岩盤に置き換えることで、斜面内部の構造を推定する手法として提案しています。BaFEMはこの手法を数値解析として自動化した手法になります。また、バランス断面法では大きく地層が変形するため、BaFEMで使用する接触要素が必要になります。

※小坂英輝(2015):バランス断面法による岩盤斜面の初生地すべり地形とその変位率,応用地質,vol.56,No.5,pp.219-229.

個別要素法(DEM)や不連続解析法(DDA)、粒子法等、要素間が大きく変形する解析手法(不連続解析)も数値解析手法として使用されています。しかし、これらの手法は、要素1つ1つの応力や力学的状態は把握できますが、斜面全体としてどういう力学的状態にあるかを把握することは困難です。FEMは大変形には対応していませんが、斜面対策工事の設計に必要な、斜面全体の応力分布や安全率の算出には優れています。また、FEMは既知の手法として広く使用されているため、斜面の判定手法としてのBaFEMに使用しています。

BaFEMを用いることで、これまで難しかった、斜面地形から斜面内部の構造、力学的状態、これからの変形予測が可能になりました。この変形予測にはこれまでのFEMのような安全率や現在の応力分布だけではなく、変形に伴い変化する斜面地形に応じた変化を把握することが可能です。変形に応じた応力分布を把握することで、例えば鉄筋挿入工をどの位置に施工すればよいか、という斜面対策工の選定にも使用することが可能です。また、斜面地形から内部構造を把握することが可能なため、ボーリング調査の補助的なツールとしても使用が可能です。増加する深層崩壊斜面の危険度予測の手法として有用な手法となります。